この記事では「どうしてIPv6に対応した光回線は速いのか」について図解を使ってわかりやすく紹介したいと思います。
実は「IPv6が速い」とか「IPv4が遅い」という言い方は、正確な表現ではありません。
ただし、この記事では「わかりやすさ」を重視して、あえてこの表現を使用します。ご了承ください。
※こちらの記事はNTTコミュニケーションズ社を始めとする様々な企業様ご協力のもと執筆することができました。この場を借りて感謝申し上げます。
- 「IPv6」が速い理由を解説します
- これまでの「IPv4」が遅い理由も解説します
- 速度に悩んでいる方は「IPv6」に変更しましょう
インターネットの世界は2つ(IPv4・IPv6)ある
インターネットの世界というのは2つあります。それが「IPv4」と「IPv6」です。
「IPv4」と「IPv6」と2つの世界がある
ただし、今アクセスしているサイトが「IPv4」なのか「IPv6」なのかに気づく人はほとんどいないと思います。
とはいえ、ほとんどは「IPv4」のサイトです。「IPv6」はめったにありません。
旧世界のIPv4は混んでいる
これまでは「IPv4」しかありませんでした。なので、ほぼ全てのWEBサイトは「IPv4」の世界に存在しています。
ほぼすべてのサイトは「IPv4」に存在している
ただし、2000年頃から「将来的にIPv4の世界がいっぱいになる」と言われるようになりました。
いわゆる「IPアドレス枯渇問題」というものです。
IPアドレス枯渇問題(アイピーアドレスこかつもんだい)とはインターネットの発展に伴い浮上してきた問題で、2019年現在広く使用されているIPv4というプロトコルにおいて、新規に配布するIPv4アドレスがほぼ枯渇している事態を指す。
引用元:IPアドレス枯渇問題(Wikipedia)
わかりやすく言えば、「IPv4の世界は新しい家(サイト)が建てられない程キツキツ状態」ということです。
新世界のIPv6は空いている
「IPアドレス枯渇問題」を受けて新しく作られたのがIPv6の世界です。
このIPv6の世界はIPv4の世界に比べて「およそ1兆倍×1兆倍×10万倍」の広さがあります。
IPv6は空いている
IPv4の世界には43億人しか住めないのですが、IPv6の世界には340澗人も住めることになっています。
「澗(かん)」なんて言われても意味がわからないですよね。
事実上「無限」に住めると考えてもらって大丈夫です。IPv4のように枯渇することは一生ないと言われています。
一 十 百 千 万 億 兆 京 垓 穣 溝 澗 正 載 極 恒河沙 阿僧祇 那由他 不可思議 無量大数
引用元:数の単位(Wikipedia)
つまり、IPv6の世界は空き空きなので、いくらでも余裕があるということです。
【問題点】IPv6に対応しているWEBサイトがまだ少ない
ただ、残念なことにIPv6に対応しているWEBサイトはまだ全然少なくて、というよりほとんどないのが現状です。
NTTやOCN(NTTコミュニケーションズ)といった大手通信会社とYouTubeやFacebookといった有名企業くらいしか対応していません。
一部の大手のサイトしかIPv6に対応していない
つまり、せっかく広々としたIPv6の世界があるのに、私たちは狭苦しいIPv4の世界でしかインターネットができていない、ということになります。
【注意】IPv4だから遅いわけではない
ただし、インターネットが遅い原因は「IPv4」ではありません。
「IPv4」の世界がキツキツであることは、あなたのインターネットが遅いこととあまり関係がないのです。
重要なのは「どうやってIPv4の世界へ行っているのか」という「通信方式」(移動手段)にあります。
「PPPoE」と「IPoE」2つの通信方式
インターネットを遅くしている原因は、全て「通信方式」にあるのです。
「通信方式」には「PPPoE(ピーピーピーオーイー)」というものと「IPoE(アイピーオーイー)」というものがあります。
インターネットが遅いのは通信方式「PPPoE」が原因です。
PPPoEとIPoEという通信方式について
インターネットの世界へは「PPPoE」もしくは「IPoE」という通信方式のどちらかを使わないと行けません。
「乗り物」とイメージするとわかりやすいでしょう。
「PPPoE」の方が遅く、「IPoE」の方が速い乗り物なのです。
PPPoEは最大200Mbpsまでしか対応していない
そもそも「PPPoE」は最大200Mbpsまでしか対応していません。
「1Gbps」を謳う光回線を契約しても「PPPoE」で通信している限り200Mbps以上は出ないのです。
PPPoEは料金所を通る必要がある
「PPPoE」が遅いのは「最大速度が200Mbpsだから」だけではありません。
もう1つの大きな理由として「インターネットの世界の入り口で一旦認証を行わないといけないから」というものがあります。
認証を行う必要がある
イメージとしては、高速道路の料金所ですね。
「PPPoE」でインターネットの世界へ行くには、必ず料金所で立ち止まる必要があるため、その分遅くなります。
同時にたくさんの車が料金所に突入すると渋滞を起こして停止してしまうようなもの。
「多くの人が利用する夜の時間帯は特に遅くなる」のは、この状態になっていることが理由です。
IPoEは料金所をスルーできる
「IPoE」は料金所で立ち止まることなく、スルーでインターネットの世界へ行くことができます。
認証がないのでスルーでネットにつながる
そのため「IPoE」を使えばインターネットが遅くなることが少なく、いつでも快適に使うことができるのです。
なので、インターネットをやるのであれば「PPPoE」ではなくて「IPoE」を使った方が速いということになります。
また、「IPoE」接続は最大速度100Gbpsまで対応しているので、1Gbpsを超える光回線のポテンシャルを存分に活かすことができます。
1Gbps=1000Mbps
理論上、IPoE通信はPPPoE通信の約500倍の速度まで対応している、ということになる。
【ポイント】IPv4はPPPoEにしか対応していない
ところが、残念なことに「IPv4」へは「PPPoE」でしか行けません。「IPoE」が使えるのは「IPv6」だけなのです。
ほとんどのWEBサイトは「IPv4」の世界にいるので「IPv6 IPoE」を使えるようにしても意味がありません。
IPv4の世界にはPPPoEでしか行けない
そこで生まれたのが「IPv4 over IPv6」という新技術です。
「IPv4 over IPv6」を使えば「IPoE」で「IPv4」に行けるようになった
「IPv4 over IPv6(アイピーブイヨン・オーバー・アイピーブイロク)」という新技術を使うことで、「IPv4」へも「IPoE」で行けるようになったのです。
「IPv4 over IPv6」という新技術
「IPv4 over IPv6」とはどんな技術かと言うと、簡単に言えば「IPv4をIPv6に見せかける」ことができる裏技だと思ってください。
「IPv6」に見せかけるので「IPoE」が使えることになります。
つまり「IPv4」なのに「IPoE」でインターネットができるので、「IPv4」のサイトに料金所で立ち止まることなくスルーで行けるようになったというわけなのです。
IPv6に見せかけてIPoE方式でIPv4へ行く
「IPv6 IPoE」+「IPv4 over IPv6」
「IPv6 IPoE」と「IPv4 over IPv6」の2つの技術を組み合わせることで、どのWEBサイトへも高速通信できるようになりました。
- IPv6のサイトへはIPoEを使って行く
- IPv4のサイトへはIPv4 over IPv6を使って(IPv6に見せかけて)IPoEで行く
「IPv6(IPoE+IPv4 over IPv6)」
各社様々な名称でサービスを提供している
この「IPv6(IPoE+IPv4 over IPv6)」の技術は様々な会社が使用しています。
提供する会社によって名称が異なるので、ご注意ください。
IPv6(IPoE+IPv4 over IPv6)を提供している回線事業者など
サービス名称 | VNE事業者 | 採用しているプロバイダの例 |
---|---|---|
v6プラス | JPNE | ドコモ光(GMOなど) So-net光プラスなど |
IPv6オプション | BIGLOBE | ビッグローブ光 |
transix | インターネットマルチフィード | IIJmioひかり、ぷらら光(OCNバーチャルコネクトとの併用) |
OCNバーチャルコネクト | NTTコミュニケーションズ | OCN光、ぷらら光(transixとの併用) |
IPv6高速ハイブリッド | BBIX | ソフトバンク光 |
これらは特に覚える必要はありません。
様々な種類の「IPv6(IPoE+IPv4 over IPv6)」があるということだけ知っておいてもらえれば大丈夫です。
「IPv6」=「IPv6(IPoE+IPv4 over IPv6)」ではない!
「IPv6」を謳う回線(プロバイダ)の中には「IPv6 PPPoE」もしくは「IPv6 IPoE」+「IPv4 PPPoE」の場合があります。
これでは全く速度は速くなりません。騙されないように気をつけましょう。
「IPv6(IPoE+IPv4 over IPv6)」だから速いのです。
「IPv6 IPoE」+「IPv4 PPPoE」や「IPv6 PPPoE」+「IPv4 PPPoE」では全く速くなりません。
IPv4・IPv6(PPPoE/IPoE)の違い
IPv4 | IPv6 | |
---|---|---|
「IPv6(IPoE+IPv4 over IPv6)」 | 速い | 速い |
「IPv6(IPoE)」+「IPv4(PPPoE)」 | 遅い | 速い |
「IPv6(PPPoE)」+「IPv4(PPPoE)」 | 遅い | 遅い |
ほとんどのサイトが存在しているのは「IPv4」です。
「IPv6(IPoE+IPv4 over IPv6)」でないと意味がないのがわかると思います。
「IPv6 IPoE」+「IPv4 over IPv6」ではないドコモ光のプロバイダ一覧
「IPv6」が使えるドコモ光には、「IPv6 IPoE」+「IPv4 over IPv6」ではないプロバイダもあるので注意しましょう。
「IPv6 IPoE」+「IPv4 over IPv6」ではないドコモ光のプロバイダ一覧
- エディオンネット
- BB.excite
- hi-ho
- シナプス
- 楽天ブロードバンド
- ネスク
- TikiTikiインターネット
- 01光コアラ
- TNC
- ASAHIネット
- WAKWAK
これらのプロバイダは「IPv6(IPoE+IPv4 over IPv6)」が使えないため高速通信ができません。
「IPv6(IPoE+IPv4 over IPv6)」が使える本当に速いプロバイダを選ぶようにしましょう。
「IPv6(IPoE+IPv4 over IPv6)」が使える光回線一覧
最後に、高速通信「IPv6(IPoE+IPv4 over IPv6)」が使える光回線の一部を紹介して終わりにします。
なるたけ速いインターネットが欲しい方は、この中から選ぶといいでしょう。
「IPv6(IPoE+IPv4 over IPv6)」が使える光回線の一例
- ドコモ光(一部プロバイダを除く)
- So-net光プラス
- ソフトバンク光
- @nifty光
- OCN 光
以上「【図解】IPv6はなぜ速い?従来の通信方式との違いを解説します」でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
コメント